海辺の石段で、初老の男が遠くを見ていた。行き交う漁船や、近くで群れているカモメにさへめもくれず、じっと遠くを見ていた。何故だかその光景が、ずっと心に残っていた。自分にとっては忙し過ぎるこの頃が、その光景を羨ましく思ったのだろうか。